自己破産すると家族や知人にバレるのか?
結論から言うと、自己破産すると周りにバレる可能性はあるものの極めて低いです。
官報は債務整理の3つの手段の内、自己破産または個人再生をすると必ず掲載されます。任意整理で掲載されないのは裁判手続きを行わないためです。
官報に掲載されるとバレる可能性はありますが、極めて低いと断言できます。それを説明するために、まず官報とは何の目的で誰に向けて、どのような手段で読むことができるのかを知る必要があります。
官報とは
官報とは国の新聞のようなものです。
国が重要な情報を発信するとき、国民はどの媒体で発信されるか知っておかないと、その情報を受け取ることができません。そこで国からの情報を掲載するメディアとして、1883年に官報が登場し、今でも一番確実で正確なメディアとして役割を果たしております。
官報は紙幣や切手を発行する国立印刷局が運営しており、近年ではインターネットでも閲覧できるようになりました。
官報に掲載される情報
官報が発信している情報は主に3つです。
公布された法令
憲法・法律・条令・政令・省令など国が公布した法令の条文や、各省庁・委員会・裁判所が発表した告示が掲載されています。
他国の貨幣換算率が知りたい
薬事法の改正履歴を知りたい
有形文化財を知りたい
広報的内容
国が発表した報告や種類で、省庁の人事、皇室の動向、地価公示、国家試験合格者、各種統計(GDP速報、天候データなど)が掲載されます。
先月の平均降水量を知りたい
最新のGDPを知りたい
近隣の土地価格を知りたい
公告紙的事項
各官公庁、裁判所、会社が法令に基づき発表した公告で、破産宣告 、失踪宣告、相続宣告、会社の決算公告などが掲載されます。
非上場企業の収支状況を見たい
取引先が倒産したので破産管財人を知りたい
取引先が合併吸収されたので、吸収先の会社を知りたい
官報に企業が決算公告をしていれば、その企業の収支状況を見れますが、実際ほとんどの企業は決算を官報に掲載せず、電子公告というやり方を採用しており、調べることは困難に近いです。
一般の人が見るケースをまとめましたが、国内のGDPや法律の改正などは他メディアを通じて知る機会が多く、わざわざ官報で見る人はほとんどいないでしょう。
官報の問題点とは
官報は日本全国の情報を確実に語弊なく伝える反面、膨大な情報量が日々掲載されるので、一般の人が全てを把握するのは不可能に近いです。
自己破産だけの情報に絞っても、2018年で73,099人の方が自己破産をしており、1日約200人の計算となります。
また基本は紙媒体なので読むためには購読するか、各県庁所在地で配布されている販売所まで行く必要があります。インターネット版だと直近30日間は無料で、それ以後は有料になります。
実際に定期的に読む人はほとんどおらず、後述する利害関係者が主な読者となります。
官報を読む人は一体誰なのか
官報を読む人は基本的に利害関係者となります。
例えば役所の税務関連の部署は、滞納している税金がある場合、自己破産をしたからといって税金は免責されないので、催促をする必要があります。
信用情報機関はCIC、JICC、全国銀行協会(全銀協) の3つがありますが、そのうち全銀協だけ官報に掲載された破産者の情報を10年間保有しています。これはお金を貸す相手が破産経験があるかをチェックするためです。
当然破産情報以外にも、会社の決算情報やGDPなどの情報も掲載されているのですが、基本的に官報は定期的に読むというよりは、必要になった際に調べものをする図書館のようなものです。
自己破産をしても家族や知人にバレないと言われているのは、一般の人にとって何ら面白い情報が掲載されているわけでもなく、日常生活で見に触れる機会がないためです。
自己破産者が官報に掲載される内容と掲載期間
自己破産の手続きは「同時廃止事件」と「破産管財事件」があります。詳しくは「自己破産の費用相場・料金体系」で解説しておりますので、参考にしてください。
この手続きによって掲載される内容が若干変わりますが、破産者の住所・名前は必ず官報に掲載されます。
同時廃止事件の場合
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 番地まで正確に住所が記載 |
債務者 | 名前がフルネームで記載 |
決定年月日時 | 令和〇年〇月〇日〇時 |
主文 | 「債務者について破産手続を開始する。本件破産手続を廃止する」と記載 |
理由の要旨 | 「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する」と記載 |
免責意見申述期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
裁判所名 | ○○地方裁判所民事第〇部 |
破産管財事件の場合
項目 | 記載される内容 |
---|---|
事件番号 | 令和〇年(フ)第〇〇〇号 |
住所 | 番地まで正確に住所が記載 |
債務者 | 名前がフルネームで記載 |
決定年月日時 | 令和〇年〇月〇日〇時 |
主文 | 「債務者について破産手続を開始する」と記載 |
破産管財人 | 弁護士 〇〇 〇〇 |
破産債権の届出期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
財産状況報告集会・一般調査・廃止意見聴取・計算報告の期日 | 令和〇年〇月〇日〇時 |
免責意見申述期間 | 令和〇年〇月〇日まで |
裁判所名 | ○○地方裁判所民事第〇部 |
官報の掲載期間は永遠
官報はブラックリスト(信用情報機関への事故情報)と違い、掲載期間はなく永久に残るものとなります。
ただ過去の新聞を読み返す人がいないように、掲載され続けるといっても毎日発行されるものですし、上述したように一般の人が読む機会が稀なので(そもそも官報を認知している人が少ないので)、家族や知人、会社にバレるといったことはほぼないと言って良いでしょう。
官報を読むための方法・場所
官報を読むためには、図書館に行くか、官報販売所で購入するか、インターネットで閲覧するかの3つの方法があります。
図書館 | 官報を読める図書館が都道府県の各地にあります。 |
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国立国会図書館 | 永田町にある図書館で歴代の官報の情報が置かれており、全ての官報を読むことができます。 |
官報販売所 | 基本的に都道府県に一ヶ所あり、定期購読や一部購読が可能で郵送でも申し込むことができます。 |
インターネット | パソコンで気軽に読むことができますが、直近30日以内は無料でそれ以上遡って見る場合は有料となります。 |
インターネット版官報から自己破産者を見る方法
官報は「本紙」と「号外」に分かれ、本紙は32ページの構成で発行しており、32ページに収まらない内容を号外として発行しておます。
インターネット版官報より閲覧したい日時の「号外」を選択し、公告>裁判所の「破産、免責、再生関係」をクリックすると、PDFで閲覧することができます。
実際に見てもらうとわかりますが、一覧でリスト化されているわけではなく、該当日の破産者の情報が独特なフォーマットで並んでおり、法人企業の破産の次に個人の破産の情報が掲載されています。
官報に掲載される回数
官報に掲載される回数は、自己破産・個人再生のどちらで借金問題を解決したかで変わり、裁判所が何らかの判決・決定をしたタイミングから2ヵ月後に官報に掲載されます。
自己破産は官報に2回掲載される
「破産手続開始決定」「免責許可決定」時の計2回官報に掲載されます。
1回目
裁判所が破産手続開始決定(旧破産宣告)をすると、官報に掲載されます。裁判所に手続開始の決定をしてもらうには、破産法に従って裁判所に対して申立てをする必要がありますが、申立てに際して様々な資料を集め、申立書を作成しする必要があり、2~3ヵ月程度かかります。
2回目
裁判所が免責を許可するのに相応しい理由があるかを確認(免責審尋)した上で、免責の許可が決定すると、官報に掲載されます。
個人再生は官報に3回掲載される
「再生手続開始決定」「書面による決議に付する旨の決定」「再生計画認可決定」時の計3回官報に掲載されます。
1回目
裁判所が再生手続開始決定をすると、官報に掲載されます。
2回目
小規模個人再生に該当する場合は再生債権者の書面決議に付する旨の決定をした時、給与所得者等再生に該当する場合は再生債権者の意見聴取を行う旨の決定がされた時に官報に掲載されます(小規模個人再生と給与所得者等再生の違い)
3回目
裁判所によって再生計画認可決定(法的に個人再生が認められた)時です。
自己破産者が官報に掲載されてもバレない理由
ここまで官報に関して様々な角度から解説してきましたが、本題に戻り「自己破産すると周りにバレないか?」の質問は「バレることは極めて低い」という回答になり、下記のような理由が挙げられます。
- 一般の人が官報をそもそも認知していない
- 官報が販売されている場所が少ない
- 膨大な量が毎日更新されるので全容を把握するのが困難
- インターネットで無料で見れるのは直近30日以内
官報に関するよくある質問
ネットに名前や住所が残ったりしないか?
ネットに名前や住所が残るようなことはありません。
インターネット版官報でPDF形式で毎日アップロードされ、内容はコピーができない状態になっており、GoogleやYahooなどの検索エンジンは官報に記載されている文字を読み込むことができません。
「官報に名前や住所が乗ってインターネットに公開される」と聞くと、自分の名前や住所がネットで検索するとヒットしそうなイメージしそうですが、プライバシーに関する内容というこもあり、検索結果には表示されない仕組みとなっています。
官報の情報を削除することはできるか?
官報に記載された内容というのは削除することはできません。またブラックリストと違い、一定期間経ったら削除される、というようなこともありません。
弁護士に依頼して官報に載せずに自己破産できるか
自己破産・個人再生の手続きは裁判所を通して行い、裁判所の決定内容が官報に載るため、載らないような形で自己破産することはできません。