自己破産とは
自己破産とは、借金が返済できなくなった際に裁判所へ申立てをし、借金を免責してもらう(借金の返済義務をなくす)ことです。
債務整理の方法は主に3つありますが、借金の減額・免責という点で比較すると「任意整理<個人再生<自己破産」という順になり、一見メリットが大きいように見えますが、様々なデメリット・リスクがあり、債務整理の最終手段と言われています。
自己破産と個人再生の違い
自己破産 | 個人再生 | |
---|---|---|
借金 | 原則全額免除 | 原則5分の1免除 |
財産 | 高価な財産は処分される | 財産は処分されない |
資格制限 | 手続中は資格制限がある | 資格制限はない |
目安期間 | 約3~6ヵ月間 | 約3~6ヵ月間 |
「個人再生」は借金の減額が原則5分の1ですが「自己破産」は借金が原則全額免除されます。
自己破産のメリットとデメリット
自己破産のメリット
- 借金が全額免責される(借金が0になる)
- 一部財産が残る
自己破産のデメリット
- 財産を失う(生活必需品等を除く)
- 約5~10年間ブラックリストに載る
- 就業に制限がかかる
- 保証人に負担が発生する
自己破産の最大のメリットは、借金が全額免責されることです。ただ当然メリットが大きい分、様々なデメリットがあります。詳しくは下記の記事で解説しておりますので、参考にしてください。
自己破産の3つの手続き
自己破産の手続きには、「管財事件」「少額管財事件」「同時廃止事件」の3つの手続きがあります。どの手続きになるかにより、費用が大きく変わります。
管財事件
財産がある状態で自己破産をすると、その財産を債権者に公平に分配する必要があります。そのためには財産の把握・売却価格の査定をする必要があり、それらの業務を破産管財人が行います。
破産管財人は裁判所が選任した弁護士で、この破産管財人が選任される自己破産を「管財事件」と呼びます。破産管財人にも報酬を支払う必要があり、それらのお金を裁判所に支払う流れになり、このお金を「予納金」と呼びます。
破産管財人(弁護士)は破産者の財産の把握・査定・分配などの業務を行うため、かなりの仕事量となり、報酬=予納金は最低でも50万円はかかります。この制度は個人向けではなく、主に企業を想定して作られているため、時間とお金がかかります。
個人・零細企業の自己破産の場合は「管財事件」ではなく、簡略化した「少額管財事件」として基本的に扱われます。
- 財産がある企業の自己破産は管財事件として扱われる
- 財産がある個人・零細企業の場合は原則「管財事件」として扱われない
- 裁判所へ納める予納金が高額(50万~70万)で時間もかかる
- 手続きにかかる期間は6ヶ月~12ヶ月
少額管財事件
「管財事件」は予納金が最低でも50万円かかることもあり、自己破産する人が支払えない、という問題がありました。
また後述する「同時廃止事件」は破産管財人が選任されず、予納金が1.5~2万で済むのですが、この手続きをするために虚偽申告が多発する事態が発生しました。
これらの問題を解決するため、予納金を少額に収めて破産管財人が調査をする方法があり、これを「少額管財事件」と呼びます。予納金は20万~30万円となります。
ただ「少額管財事件」は法律で定められている制度ではなく、裁判所の判断で実施されているため、そもそも「少額管財事件」が適用されない場合があります。また自己破産の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士が代理人とはなれないため「少額管財事件」として扱われず、「管財事件」として扱われます。(弁護士の場合は代理人となれるため少額管財事件として扱われます)
- 財産がある個人または零細企業が対象
- 裁判所へ納める予納金が少額(20万~30万円)
- 自己破産者の3~4割が少額管財事件
- 司法書士に自己破産を依頼した場合は少額管財事件にならない
- 手続きにかかる期間は2ヶ月~5ヶ月
同時廃止事件
財産がない(売却するほどの高額な財産がない)場合は、財産の調査や査定をする必要がないため、破産管財人が必要ありません。
この制度は、財産がないことが明らかな状態で、破産管財人が調査をしても無駄に時間とお金だけがかかることを防ぐことを目的としています。財産がない場合は破産手続きの開始と同時に、手続きが終了するため「同時廃止事件」と呼びます。
弁護士費用等を除いた財産が20万円以上あるかどうかが同時廃止事件として扱われるかの目安となります。
- 財産がない人が対象
- 手続きが非常に簡単で期間が短い
- 破産管財人が必要ないため、裁判所へ納める予納金が少額(1.5~2万円)
- 自己破産者の6~7割が同時廃止事件
- 手続きにかかる期間は3ヶ月~6ヶ月
自己破産ができる条件
- 借金が支払えない状態であること
- 借金をした理由や経緯が正当であること
借金をした理由や経緯が正当でない場合は免責不許可事由に該当し、自己破産しても借金の支払い義務が残ります。また自己破産して免責許可されたとしても、税金や養育費など支払い義務が残るお金もあります。詳しくは下記記事で解説しておりますので、ご参考にしてください。
自己破産の費用相場
自己破産は弁護士または司法書士に依頼する流れになります。
司法書士の場合は債権者1社につき140万円を超える借金額は取り扱うことができないため、弁護士に依頼される方が多いという特徴があります。
「自己破産」は「裁判所への実費費用」と「弁護士・司法書士への報酬費用」の2つの費用が発生します。
裁判所への支払い費用
内訳 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
収入印紙代 | 1,500円 | 破産手続の手数料 |
郵便切手代 | 3,000円~15,000円 | 借入社数によって変動 |
官報掲載費 | 10,000円~15,000円 | 官報に掲載される費用 |
予納金 | 0円 | 同時廃止事件の場合 |
20万~30万円 | 少額管財事件の場合 | |
50万~70万 | 管財事件の場合(レアケース) |
予納金とは
「予納金」とは破産手続きが管財事件として扱われる場合に裁判所に支払うお金で、破産者の財産を調査する破産管財人への報酬となります。
官報とは
「官報」とは国の機関誌で誰でも閲覧することができ、「個人再生」「自己破産」をすると、名前や住所が記載されます。官報への掲載費は1万~1.5万円となり、これは義務で支払う必要があります。
弁護士・司法書士への支払い費用
専門家 | 同時廃止事件の費用相場 | 管財事件の費用相場 |
---|---|---|
弁護士 | 30万円 | 40万~60万円 |
司法書士 | 20万円 | 30万~40万円 |
弁護士と司法書士どちらに依頼するか、同時廃止または管財事件(少額管財事件)のどちらになるかにより費用が変わります。弁護士に依頼した方が、裁判官と面談(審尋)をする際に代理人として面談に対応してくれたり、予納金が抑えられたりと、メリットが大きいため、一般的には弁護士に依頼する形になります。
自己破産の期間
「同時廃止事件」「管財事件」のどちらで自己破産するかにより期間が大きく変わります。
同時廃止事件の自己破産までの期間
同時廃止事件での自己破産の期間は、準備~免責決定まで3ヵ月~6ヶ月程度となります。大雑把な流れは下記の3ステップとなります。
- 破産申立ての準備
- 破産手続きの申立て
- 免責手続きの申立て
管財事件での自己破産までの期間
管財事件での自己破産の期間は、準備~免責決定まで4ヶ月~12ヵ月程度となります。上記の流れに下記の3ステップが追加されます。
- 破産管財人の選任
- 財産の調査・換金
- 債権者集会
自己破産の手続きの流れ
自己破産を弁護士に依頼した際の流れを下記にまとめました。
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【申立てまでの準備】弁護士への相談
初回無料相談の事務所が多いので、まず気軽に相談してみることをオススメします。自己破産以外の債務整理の方法も検討しながら、どの方法がベストか決めます。
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【申立てまでの準備】債権者に受任通知の送付
委任契約を締結した後、弁護士は貸金業者などの債権者に対し、受任通知(介入通知)を送付します。この通知の送付すると、債権者は債権者へ取り立てができなくなります。
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【申立てまでの準備】債権者に受任通知の送付
委任契約を締結した後、弁護士は貸金業者などの債権者に対し、受任通知(介入通知)を送付します。この通知の送付すると、債権者は債権者へ取り立てができなくなります。
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【申立てまでの準備】弁護士に必要書類を作成してもらう
自己破産手続きに必要な申立書・関係書類を準備します。何の書類が必要かは弁護士が説明をしてくれますので、指示された書類の提出をするようにしましょう。
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【自己破産の申立て】自己破産の申立て・破産の審尋
弁護士が裁判所に自己破産手続き開始の申立てをします。
申立てしてから、約1ヶ月後に裁判所にて審尋が行なわれます。これは裁判官との面談で、なぜ自己破産をしたいのかを聞かれます。弁護士に依頼している場合は代理人として対応してくれるので、債務者本人は裁判所に行く必要はありません。 -
【自己破産の申立て】官報に掲載
官報に破産者の名前や住所などが掲載されます。
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【自己破産の申立て】破産手続き開始の決定
面談の結果、申立人が「支払不能」と裁判所が判断すれば、数日以内に破産手続き開始の決定がなされます。
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【免責申立て】免責審尋
申立書の内容や債権者からの意見書の確認をするため、弁護士同席で裁判所に出頭し、裁判所からの聴取を受けます。
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【免責申立て】免責許可決定
免責許可決定から約1~2ヵ月後に免責許可決定が法律上確定し、借金を返済する義務がなくなります。
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【管財事件の場合】破産管財人の選任
破産者の財産調査するための破産管財人(弁護士)を裁判所が選任します。
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【管財事件の場合】財産の調査・換金
破産管財人が破産者の財産の調査や売却による換金額、債権者の数や債権額を調査します。
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【管財事件の場合】債権者集会
債権者集会とは破産者の財産を債権者に分配することで、裁判官、破産者・債権者が集まり、破産管財人が説明を行います。