個人再生

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個人再生(民事再生)とは

「個人再生」とは、裁判所を通じて債務を減額してもらう、債務整理手続きの一つです。

民事再生法に基づいて法的整理手続きを行います。通常の民事再生手続きは個人を対象にしておりませんでしたが、個人にも使いやすいように手続きを簡易化した民事再生手続きの特則が個人再生(個人民事再生)です。

裁判手続きに必要な資料収集等の手間がかかりますが、原則5分の1(最大10分の1)借金を減らすことができます。「任意整理」は借金の減額が目的なので免除されませんが、「個人再生」は借金の一部の支払いが免除されます。

「自己破産」は所有財産が処分の対象となるため、住宅や家などの資産が処分されますが、個人再生は資産を持ったまま手続きができるのも特徴の一つです。

「任意整理」は多額の借金の返済には向きませんが、「自己破産」で全ての資産を失いたくない、という方が「個人再生」をする傾向があります。

自己破産と個人再生の違い

 自己破産個人再生
借金原則全額免除原則5分の1免除
財産高価な財産は処分される財産は処分されない
資格制限手続中は資格制限がある資格制限はない
目安期間約3~6ヵ月間約3~6ヵ月間

「自己破産」は借金が原則全額免除されますが、個人再生は原則5分の1で、最大10分の1が免除となります。免除額が「自己破産」より少ないものの、財産を守ることができる点が大きな特徴です。

個人再生(民事再生)のメリットとデメリット

個人再生のメリット

  • 借金が原則5分の1(最大10分の1)に減額されるので返済が楽になる
  • 自己破産とは違って住宅や車などの資産を手放さなくてよい
  • 任意整理に比べて借金の大幅な減額が期待できる
  • 貸金業者からの催促がストップする

個人再生のデメリット

  • 官報で公告されるため家族や知人にバレる
  • 約5~10年間ブラックリストに載る
  • 自己破産とは違って安定収入がないとできない
  • 保証人に負担が発生する

個人再生の最大のメリットは、任意整理より借金の負担額が減り、自己破産のようなデメリット(資産の没収)がないことです。 詳しくは下記の記事で解説しておりますので、参考にしてください。

個人再生(民事再生)の2つの手続き

個人再生の手続きには、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。

小規模個人再生

「小規模個人再生」とは住宅ローン以外の借金の総額が5000万円以下で、安定した収入が見込める個人が利用できる手続きで、一般的にはこの手続きで個人再生の手続きをする流れになります。

「給与所得者等再生」より減額される額が大きいですが、債権者から1/2以上の反対がないことが条件となります。

民事再生法で定められた最低返済額に従って、最大10分の1まで債務が減額されます。借金に応じて減額される額は下記の通りとなります。

借金総額 最低返済額
100万円未満 借金全額
500万円以下 100万円
1500万円以下 借金総額の5分の1
3000万円以下 300万円
5000万円未満 借金総額の10分の1

給与所得者等再生

上述したように「小規模個人再生」の方が減額が大きいため、自己再生の手続きをする9割近い方は「小規模個人再生」を選択しますが、債権者から1/2以上の反対 があった場合は「給与所得者等再生」を検討する必要があります。

「給与所得者等再生」の返済金額は、可処分所得の2年分以上で、「小規模個人再生」を利用した場合より必ず高額でなければならない、とされているので、借金の返済額は「小規模個人再生」に比べてあまり減らない、という特徴があります。

ただ過去7年以内に破産法に基づく免責決定を受けている場合、「小規模個人再生」の手続きは可能ですが、「給与所得者等再生」の手続きはできません。

個人再生(民事再生)ができる条件

  • 安定収入があり、再生計画に則った返済ができること
  • 借金の総額が5000万円以下であること
  • (小規模個人再生手続きのみ)債権者から1/2以上の反対がないこと
  • (給与所得者再生手続きのみ)過去7年以内に、個破産法に基づく免責決定を受けていない場合

3~5年で完済できないと個人再生はできない

個人再生で定められた原則3年、最長でも5年以内に元金分を完済できる支払い能力がなければ、個人再生はできません。

例えば借金の元金が1000万円あり、毎月返済できる金額が10万円だけの場合、10年かけても600万円しか返済できないため、個人再生を行うことは不可能となります。

個人再生(民事再生)の費用相場

個人再生は弁護士または司法書士に依頼する流れになります。

司法書士の場合は債権者1社につき140万円を超える借金額は取り扱うことができないため、弁護士に依頼される方が多いという特徴があります。

個人再生は「裁判所への実費費用」と「弁護士・司法書士への報酬費用」の2つの費用が発生します。

裁判所への支払い費用

内訳金額
収入印紙代1万円
官報掲載費約1.5万円
郵便切手代1,600円
個人再生委員への報酬費15万~25万円
合計約18万~28万円

「官報」とは国の機関誌で誰でも閲覧することができ、「個人再生」「自己破産」をすると、名前や住所が記載されます。これは義務化されており、掲載費用として約1.5万円程度を裁判所へ納める必要があります。

個人再生委員とは再生が適正に行われるよう指導・監督するためのもので、裁判所が管轄する地域の弁護士を選任します。各裁判所によって個人再生委員の有無が代わり、東京地裁は必ず選定されますが、東京地裁以外はほとんど選任されません

報酬額は代理人になれる弁護士がいる場合は15万円、債務者本人が申立てる場合は25万円が相場になりますが、選任されない場合は費用は一切かかりません。司法書士に依頼した場合は代理人になれないので、25万円かかります。

弁護士・司法書士への支払い費用

専門家費用相場
弁護士30万~60万円
司法書士20万~40万円

弁護士と司法書士どちらに依頼するかにより費用が変わります。明確な料金体系が定められているわけではなく、各事務所によって費用が変わります。また「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を行う場合は手間と時間がかかるため、費用が高くなりがちです。

弁護士に依頼するメリットはほぼ全ての手続きを丸投げできるので、債務者本人の手間がかからないという点です。弁護士は司法書士に比べて業務範囲が広いため「個人再生」が上手くいかなかったとしても「任意整理」や「自己破産」など他の債務整理の手続きにスムーズに移動できる点も特徴です。

司法書士は弁護士に比べて費用が安いですが、1社ごとの借金が140万円を超える場合は対応できません。司法書士は書類作成と提出が主な仕事のため、弁護士に比べると債務者本人が行う作業が多くなります。

また代理人になってもらえる弁護士に依頼すれば、個人再生委員は不要になるため10万円費用が安くなります。(東京地裁以外であれば個人再生委員がそもそも必要ない場合が多いので、気にする必要はないかと思われます)

司法書士でも法務省の認定を受けた認定司法書士でないと、個人再生を含む債務整理全般の業務に対応することができません。

「個人再生」の費用相場は詳しく下記にまとめております。費用を削減する方法も掲載しておりますので、ぜひご確認下さい。

個人再生(民事再生)の期間

個人再生手続きは裁判所への申立から認可決定(実際の返済スタート)まで、約6ヶ月程度の期間が必要になります。個人再生委員が選任されなかった場合であれば、約3ヶ月〜4ヶ月で許可決定となるので、個人再生委員の選任がどうなるかによって期間が変わります。

個人再生委員とは

個人再生委員とは再生が適正に行われるよう指導・監督するためのもので、裁判所が管轄する地域の弁護士を選任します。各裁判所によって個人再生委員の有無が代わり、東京地裁は必ず選定されますが、東京地裁以外はほとんど選任されません。

個人再生(民事再生)の手続きの流れ

  • 弁護士・司法書士への相談
  • 弁護士・司法書士との契約締結
  • 債権者への受任通知を送付
  • 裁判所へ個人再生の申し立て
  • 個人再生委員の選任
  • 債権額の確定
  • 再生計画案の提出
  • 再生計画認可決定
  • 再生計画認可決定の確定
  • 返済開始