2020.01.13

連帯保証人を解除できる方法と外れることが可能なパターンとは

そもそも連帯保証人とは

連帯保証人と聞くと、借金の肩代わりをする人というイメージがあると思います。しかし、実際のところどれくらいの効力があるものなのか、詳しく理解できている人は多くありません。

連帯保証人は「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」といった権利を持たない保証人のことを指します。債務者本人がお金を返済できなくなったり逃亡してしまった場合、債務者に代わって借金の返済をするという契約を交わしているという点では、保証人と何ら変わりありません。

しかし、連帯保証人の場合は保証人に与えられる催告・検索の抗弁権を排除されているため、より責任が重い立場と言えます。催告の抗弁権とは、債権者から借金返済の請求を受けたとき、まずは債務者本人に請求してほしいと主張できる権利のことを言います。

検索の抗弁権も同じ原理で、保証人の財産より先に債務者の財産を差し押さえてほしいと主張できる権利のことを言います。保証人はこれらの主張をする権利があるのに比べ、連帯保証人はこの権利を持たないために、ほとんど債務者本人と同じ重荷を背負うことになるのです。

連帯保証人の解除が不可能なパターン

債務者の借金返済が不可になると、連帯保証人に借金の支払い義務や請求がいってしまいます。そうなれば、連帯保証人の生活が脅かされることとなりますので、一刻も早く連帯保証人という立場を解除したいと考えるでしょう。

そういった場合、すでに解除できる術がなくなっていることもあります。以下の項目に当てはまるものがあれば、連帯保証人の解除は不可能になっている可能性が高いので注意してください。

  • 連帯保証人として債権者に1円でも返済をしたことがある
  • 離婚をきっかけに連帯保証人を辞めたいと思っている
  • 連帯保証人になったものの、経済的に余裕がなくなってきたので辞めたい

基本的に、連帯保証人側の事情だけで連帯保証人契約を解除することはできません。また、借金返済の請求が来たことで、慌てていくらかを支払ってしまったという場合も、支払い義務を受け入れたとみなされ契約の解除ができなくなってしまいます。

債権者から借金返済の請求が来ても、すぐに支払いを行ったりせず冷静に対処することが重要です。

連帯保証人を解除・解約出来る可能性があるパターン

連帯保証人を解除することは原則として難しいと言えますが、解除できる可能性のあるケースというものは存在しています。では、どういったパターンであれば連帯保証人の解除が出来るのか順を追って確認していきましょう。

同意なく勝手に捺印や代筆でのサインをされた場合

例えば、実印を盗まれてしまったりサインが悪用されたという場合、本来は連帯保証人契約に同意していなかったにもかかわらず勝手に契約を交わされたということになります。そういった場合は、連帯保証人契約を無効にできる可能性があります。

ただし、自分が全く無関係で勝手に契約が取り交わされていたという場合も、無効にするまでにいくつかの手続きをしなければなりません。まずは債権者に対して、連帯保証人として借金を肩代わりする意思がなく、契約が無効であるという内容を記した内容証明と呼ばれる書面を送る必要があります。

ただし、内容正面を送っただけで連帯保証人契約が解除されるかと言うとそうではありません。内容証明を送ったあとは、先々裁判沙汰になったりすることを防ぐためにも弁護士に相談の上、連帯保証人解除を依頼するべきでしょう。

もちろん、訴訟が起きても連帯保証人契約が無効である事実がある限り勝訴できる可能性は高いですが、裁判が起きてしまうと長期間に渡って労力が必要なため、自己解決をしようとするのは危険です。

詐欺や脅迫により無理やり契約を結ばされた場合

自分の捺印やサインであるものの、連帯保証人契約を結ぶ際に騙されていた・あるいは脅迫されていたという場合は、刑事事件ので詐欺罪や脅迫罪・強要罪に該当することもあります。まずはそちらの罪に該当しないか弁護士に相談することが大切です。

加えて、連帯保証人契約を結ぶ際に借金の金額を詐称されていたなどのケースでは、詐欺により連帯保証人契約を解除できる可能性が高いです。ただし、債務者が嘘を言っていたような場合は詐欺には当たらず、あくまで金融機関が連帯保証人に対して嘘を言っていた場合のみ該当します。

また、金融機関が詐欺をしたという証拠がなければ立証はできません。連帯保証人契約を取り交わす時は、しっかりと書面の写しをもらうなど証拠を残すことが重要になります。

詐欺の証拠がある場合は、勝手にサインをされていた場合と同様に詐欺をされた旨と連帯保証人契約を解除する旨を内容証明に記載して送りましょう。脅迫をされた場合も証拠を揃えた上で同じ手順を踏めば問題ありません。

こちらも内容証明を送っただけでは連帯保証人契約を解除できる可能性が低いので、合わせて解除の手続きを弁護士に依頼しておきましょう。

騙されたまま契約を結んでしまった場合

連帯保証人になる意思を持っていたものの、まさか借金があったり、すぐに破綻しそうな危ない事業を始めようとしているとは思っていなかった(そういうことであれば連帯保証人にはなろうと思っていなかった)という場合も、連帯保証契約を取り消すことができる可能性が高いです。

基本的に連帯保証人になってほしいと言われてすんなり納得する人はいないでしょう。ただし、「絶対に借金の催促がいくことはない」や「形式上のサインだけで迷惑はかけないから」と言われると、それを鵜呑みにして連帯保証人になってしまう人の良い方もいます。

そういったパターンは契約を締結してしまったあとでも、その契約内容を消費者契約法によって取り消す手続きをとることが可能です。債務者は金融機関から業務受託しているため、消費者契約法の対象になっており、この法律の元契約解除が可能になるのです。

消費者契約法第4条の「不実の告知」を理由すれば連帯保証契約は取り消すことができますので安心してください。「不実の告知」については以下を参照してください。

第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)

勘違いをしたまま契約をしてしまった場合

勘違い、つまり錯誤をしていた場合も、連帯保証人契約を解除できる可能性が高いです。勘違いとは具体的にどういうものかと言うと、騙されたわけではないものの、最初に認識していた保証人契約の内容と、再度確認した時の内容が違っていた時などです。

勘違いについては後日証明することは難しいものの、勘違いをしていて連帯保証人契約の内容に認識できていない部分があるため契約を解除するという内容証明を送付することで、解除の手続きを進めていくことができます。

ただし、勘違いをしていたことに過失が認められたりした場合は、解除を申し出ることはできません。また、通知だけで解除ができるわけではありませんので、勘違いをしていた際にはまず弁護士に相談してみましょう。

未成年者が連帯保証契約を結んでしまった場合

未成年者が連帯保証人契約を結んでしまった場合は、あとからでも取り消しをすることが出来ます。ただし、以下のケースでは未成年者の連帯保証人契約であっても取り消しが難しくなってしまいます。

未成年者の連帯保証人契約が取り消せなくなるパターン

  • 婚姻済みの未成年者が契約を取り交わした場合
  • 未成年者が成人済みであるなど嘘をついていた場合
  • 親権者がその契約を後々になって承認した場合
  • 未成年者が成人になってから過去の契約について承認した場合
  • 未成年者が成人になってから5年が経過し時効が来た場合
  • もともと親権者がその契約に同意をした上で契約を結んだ場合

上記のパターンに該当しない場合は、成人後の本人、または親権者が未成年者による契約だと記載した内容証明を送るだけで、連帯保証人契約は解除できる可能性が高いです。不明点や不安がある時は弁護士に相談しても構いませんが、未成年者の契約は内容証明だけで解除出来ることがほとんどです。

根保証契約だった場合

根保証契約とは、一度だけの契約で将来的に発生する債務についても保証責任を負うという制度のことです。根保証契約は原則として契約期間最長5年、更新方法は連帯保証人から通知がない限り自動更新となっています。

もしもその契約が根保証契約だった場合は、根保証契約を更新する意思がない旨を内容証明に記載して通知するだけで、契約を解除することが出来ます。すでに発生している借金は支払い義務がありますが、根保証契約は解除しなければ継続されてしまうので、絶対に解除しておくべきです。

親が勝手に未成年を連帯保証人にした場合

未成年者は基本的に連帯保証人契約を解除することが出来ますが、親が未成年者を連帯保証人に仕立て上げた場合も同様に解除が可能です。これは無権代理行為と呼ばれています。未成年者は成人後も連帯保証人契約を承認しないようにしてください。

この場合も、事実を記載した書面を通知するだけで契約は解除できますので、慌てずに対処していきましょう。

連帯保証人を確実に解除する方法とは

上記では連帯保証人の契約を解除・取り消し・無効に出来る可能性があるパターンについて解説しました。しかし、勘違いや詐欺もなく、未成年でもないようなケースでは、連帯保証人の立場は絶対に逃れられない契約となってしまいます。

連帯保証人の契約を結んでしまうと、その立場から外れることは絶対にできないのでしょうか?結論から言うと、一度連帯保証人になってもその立場を外れる方法はいくつかあります。

別の人を新たに連帯保証人にする

現在の連帯保証人が立場を逃れたいと思うような状況を知りながら、連帯保証人になってもいいと行ってくれる人を見つけるのは至難の業ではありますが、新しい連帯保証人が見つかれば、連帯保証人を交代するという形で立場を外れることは可能です。

新しい連帯保証人は誰でもいいというわけではなく、安定した収入や預貯金があり、経済的に借金の返済能力があると言える人でなくてはなりません。収入源が確保できていて、連帯保証人を交代してもいいという方がいれば、その方にお願いすることで連帯保証人は解除できます。

別の担保を提供

連帯保証人は「人」が付く通り、人物が担保に入っているという状況です。もしも不動産などの物的担保があるのであれば、人物が連帯保証人になる代わりに、不動産を担保として提供することで連帯保証人の立場を外れることが出来るかもしれません。

ただし、この物的担保を提供するのにもリスクはありますので、少しでも不安な点があれば弁護士に相談するのが良いでしょう。

主債務者の消滅時効を援用

消滅時効とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度のことを言います。可能性としては低いものの、債権者が権利を行使しなければじきに借金の時効が訪れます。時効を迎えることが出来れば、借金を免れることが可能になります。

その間に債務者が債務を承認したり、債権者が権利を行使した場合は一定期間というものはリセットされますので、連帯保証人は時効を援用することができなくなり、この手法は無効になってしまいます。金融機関等は5年と定めていることが多く、そのような長い期間何も起こらないというケースはあまりありません。

相続放棄をする

もし、両親のどちらかが連帯保証人になっていて亡くなったあとにその事実を知った場合、相続放棄をすることで連帯保証人の立場を引き継がずに済みます。ただし、相続放棄をする場合は、借金などのマイナスの財産だけでなく、土地や遺産などプラスの財産もすべて手放さなければいけなくなるので注意が必要です。

連帯保証人として肩代わりする借金があったとしても、残されたプラスの財産の額がそれより大きかった場合は借金を返済しても財産が残るため、相続破棄をせずにそのまま連帯保証人の立場を引き継いだほうが得になります。

契約の無効・取消を主張

これは先述した通り、詐欺や未成年を連帯保証人にしたというケースで連帯保証人契約が無効・取り消しになるというパターンです。勘違いをしていたり、騙されていたような場合でも契約は無効にできるので、連帯保証人契約をどのようにして結んだかも確認しておきましょう。

まとめ

一度連帯保証人契約を結ぶと、地道に借金を返済するか自己破産をしない限り、その立場から逃れることはほぼ不可能だというイメージがあります。しかし、実際には連帯保証人契約を取り消したり無効にする方法もいくつかあり、しっかりと手続きさえすれば解除する方法もいくつかあることが分かりました。

連帯保証人になっていて借金の取り立てが来るとついつい慌ててお金を支払いがちですが、連帯保証人契約を解除する手立てを残しておくためにも借金の返済は1円たりとも行わないようにしましょう。