2020.01.13

自己破産で奨学金の返済はどうなるの?リスクと破産前に利用できる制度を徹底解説

自己破産をしたら奨学金の返済はどうなる?

子供の進学には多額の費用がかかります。基本的には両親が学費を支払いますが、中には家庭の事情などで学費の支払いが難しく、進学を諦めなくてはならないケースも増えています。そんな時便利なのが、奨学金制度。

ただし、返済義務のない奨学金は稀でほとんどが卒業後社会に出てから返済していくものなので、実際には「学資ローン」のような位置づけと言えるでしょう。この奨学金には割合こそ異なるものの、ほぼ全てに利子がついているため、返済する時には借りた額より更に規模が大きくなっています。

そうなると、社会に出てすぐの安月給では支払いが追いつかず、俗に言う「奨学金破産」へと追い込まれてしまうパターンも少なくありません。奨学金の返済が難しく自己破産手続きを行った場合、免責の許可さえ下りれば、奨学金返済の義務はなくなります。

社会人になったあとで返済が滞った場合は、奨学金の種類によって年利10%などさらに負担がかかるペナルティーが課されることもあるため、1000万円規模の奨学金を20年~30年かけて少しづつ返していくことが現実的ではない場合は自己破産をすることで奨学金の負担から開放されるのです。

奨学金を自己破産する際のリスクと注意点

奨学金は自己破産をすることで返済義務がなくなるため、社会人になったとしても「非正規雇用で返済が追いつかない」「健康上の理由で働けなくなった」など返済が難しくなれば、自己破産を検討することが賢明でしょう。

ただし、通常の借金であっても自己破産をした際はメリットばかりでなく様々な制限やデメリットがあるため、奨学金破産をする前にリスクについても理解しておかなければなりません。

連帯保証人に奨学金の返済義務が生じる

奨学金を借りる際は、両親か親戚が連帯保証人になっていることがほとんどです。もし、社会人になってから奨学金の返済が難しくなり自己破産をした場合、奨学金の返済義務は連帯保証人である両親、または親戚に移ります。

この時返済しなくてはならない残りの金額を一括請求されるので、よほど財力のある連帯保証人でない限り、連帯保証人自身も返済が難しくなるでしょう。奨学金を返済できる財力がない場合は、連帯保証人も自己破産をして家や車を差し押さえられてしまう可能性があります。

保証機関が連帯保証する機関保証を利用して奨学金を借りていれば、もしも奨学金の返済を延滞しても保証機関が一括返済してくれるため連帯保証人に迷惑がかかることはありませんが、その後は返済してもらった額を保証機関に返済していく必要があるため、どちらにしても自己破産をする結果となってしまうかもしれません。

財産が没収・差し押さえされる

これは奨学金の自己破産に限らず、自己破産の制度として成り立っているものです。20万円以上で家や車など換金できる財産と生命保険や99万円以上の現金などはすべて差し押さえられたのち、二度と戻ってくることはありません。

最低限度の生活を営むのに必要なもの(家具や20万円以下の現金など)は没収されませんが、持ち家などがあれば大きなダメージとなるでしょう。

信用情報機関にブラックリスト登録される

自己破産をすると、自己破産をした人として信用情報機関に事故情報掲載されます。信用情報機関に掲載される期間は5年から最長10年で、その間は新規のクレジットカード発行や住宅ローンを組むことができなくなります。

職業制限がある

自己破産をすると、免責手続きが終わるまでは弁護士などの士業や警備員など特定の職業に就くことができなくなります。それが原因で失業したり、転職がうまくいかなくなるパターンも少なくありません。

職業制限があるのは、あくまで自己破産による借金を帳消しにする手続きが終わるまでの期間に限られているため、それ以降は特に特定の職種に就けなくなるなどのデメリットはありません。

家族や親戚に隠すことが難しくなる

先述したように、奨学金の連帯保証人はほとんどの場合両親や親戚などの身内です。そのため、自己破産をすることで連帯保証人に通知が届き、自己破産をしたことがどうしてもバレてしまいます。

それでなく、政府が発行している官報にも破産者として名前が掲載されるため、知り合いに金融関係や政府関係者がいれば人伝に噂が広がってしまう可能性があります。

奨学金破産をする前に利用できる制度や負担を軽減する方法

奨学金が負担になり自己破産を検討している方は、他の債務整理についてもメリット・デメリットをチェックしておきたいと考えるでしょう。しかし、奨学金の場合は金額が大きいことがほとんのため、任意整理や個人再生にはあまりメリットがありません。

したがって債務整理をする際には自己破産一択となるわけですが、様々な制度を利用して奨学金返済の負担を軽減する方法があるということも知っておいてほしいと思います。

連帯保証人を保証会社に切り替えられるか確認

親や親戚に絶対迷惑をかけたくないという方にまず確認してほしいのが、連帯保証人の切り替えです。人的補償の場合は自己破産をすると連帯保証人に返済義務が生じますが、奨学金の種類によっては以下2つの方法で機関保証に切り替えられる場合があります。

  • 保証の変更手続きをする
  • 「定額式」から「所得連動返還方式」へ返済の方法を切り替える

途中変更はやむを得ない事情がある場合に限り、返済方法の変更も第一種奨学金に限るという制約はありますが、自分が条件に当てはまっていれば連帯保証人に迷惑をかけない方法に切り替えて、機関の決まりに則って返済をしていくことが可能になります。

減額返還制度を利用

減額返還制度とは、月の返済額を半分にする代わりに返済期間を2倍にするという制度です。携帯電話の分割契約のように月々の負担を軽くして、毎月無理のない額を返済していけるようにします。減額返還制度を利用できる条件としては、以下を参照してください。

  • 年収金額325万円以下(税込み)
  • 年間取得金額225万円以下(必要経費控除後)

1人につき38万円の収入取得金額を控除可能なため、年間の収入が325万円をオーバーしていても、38万円を引いてそれ以下になればこの制度を利用することが可能です。

返還期限猶予制度を利用

返還期限猶予制度とは、返済を一時的に止めることが出来る制度です。この制度を一度利用すれば最大12ヶ月の猶予期間が与えられ、申請すれば最大10年間使用することが出来ます。利用条件は以下を参照してください。

  • 年収金額300万円以下(税込み)
  • 年間取得金額200万円以下(必要経費控除後)

産休や育休中、生活保護受給中、災害や傷病などの場合であれば10年間の制限もなく利用することができるため、突然の失業や病気などで働けなくなったなどの事情があれば、積極的に利用するべきでしょう。

減額返還制度を利用

減額返還制度とは、毎月の返済額を減額できる制度です。支払額は半分~1/3程度まで減額でき、減額された分だけ返還期限が延長されます。適応期間も最大15年と長いため、返済期間を延ばしたりなどの措置では経済的に返済が難しいといった場合に利用を検討するのが良いでしょう。利用条件は以下を参照してください。

  • 年収金額325万円以下(税込み)
  • 年間取得金額225万円以下(必要経費控除後)

また、奨学金の全額返済が本当に難しい状況にあるか、無延滞であるか、口座振替にできるか、月賦返済が可能か、信用情報の取り扱いについての同意書を提出しているかなどが別途で適応条件になります。

返還免除制度が適応されるかどうかを確認

返還免除制度とは、奨学金の返済を全額免除してもらえる制度です。ただしこれには条件があり、申請したからと言って誰にでも適応されるわけではないので注意してください。適応条件は以下に当てはまるものです。

  • 本人が死亡または障害などで返済が難しいと相続人や連帯保証人が申し出た場合
  • 心身障害で、労働能力を喪失した場合
  • 大学院で第一種奨学金を貸与され、在学に優れた業績をあげた場合
  • 大学院で第一種奨学金を貸与され、教育・研究の職に就いた場合

学業で大変優秀な成績をあげたと認められれば、奨学金の返済は免除されます。その他であれば、物理的に返済能力がない・もしくは返済することができない場合にのみ、この制度は適応されます。

両親の自己破産後も奨学金は取得出来る?

自分の両親が自己破産していた場合は、進学の際奨学金を借りることが難しくなるのではないかと考える方もいます。しかし、実際には自己破産者の子供も奨学金を借りることが可能です。奨学金の借主は子供本人のため、両親とは関係がないからです。

ただし、自己破産をした人は信用情報機関にブラックリストとして掲載され、5年~10年の間は住宅ローンを組めないなど様々な制限があります。奨学金が問題なく借りられる状況にあっても、その連帯保証人を自己破産をした親に頼むのは難しいと考えておきましょう。

理由としては、自己破産をしてブラックリストに載っている人は連帯保証人になれないという制限があるためです。そのため、両親が自己破産をしてブラックリスト入りしている状態で奨学金を借りる場合、別の親族か、連帯保証人をつけない保証機関を利用しなくてはなりません。

日本学生支援機構であれば「緊急採用(第一種)」や「応急採用(第二種)」といった奨学金制度もあります。これらは、失職や病気などでやむを得ず他の学校に入学することとなったために費用が変動し、緊急で奨学金の必要が生じた場合に受けることが出来るものです。

事情があって奨学金を受けることが難しい状況にあるが、どうしても奨学金が必要といった場合にはこの2つの奨学金を検討してみましょう。

奨学金破産にならないために準備すべきこと

奨学金は社会に出るため進学を目指す学生にとって、とても便利なものです。ただし、奨学金を借りたあとの計画をしっかり立てなければ、後々自分の首を絞めることにも繋がりかねません。そこで、奨学金破産にならないためにやっておくべきことをまとめました。

奨学金を借りる可能性があれば、準備は前倒し

日本学生支援機構の給付型奨学金の申し込みは、高校3年生の春には申込みを締め切ってしまいます。やっぱり奨学金が必要になりそう…と思ったタイミングで動き出すと、申し込める奨学金が限られており、結局負担の大きい学資ローンを組むことになってしまうことも。

そうならないためにも、情報収集はできるだけ早めに、早くて高校2年生の終わり頃には調査と準備を進めておくようにしましょう。

借入総額の確認と返還シミュレーションをしっかり行う

借りられる金額と在学中必要になる金額の把握は大前提ですが、どれくらいの期間、毎月どれくらいの額を返済していかなくてはならないのか、年利はどれくらいになるのか、どういうパターンでペナルティーが付いてしまうのかなど、制度の内容も含めてしっかり把握しておく必要があります。

就職できれば返済は可能だろうというなんとなくの予測で奨学金を借りてしまうと、思わぬ出費や予想外の出来事により、あっという間に数百万円の負債を抱える人になってしまいます。そうならないためにも、日本学生支援機構「奨学金貸与・返還シミュレーション」で返済シミュレーションはきちんとしておくようにしましょう。

繰上返還で将来の負担を軽減

奨学金は一度にまとまったお金を返済する繰り上げ返還をすることが可能です。大学4年生の間にアルバイトをし奨学金返済用にお金を貯めておくなどしても良いので、できるだけ将来の負担を減らせるように努力しておきましょう。

まとめ

日本には返済義務のない奨学金がほとんどないため、給付型で返済不要な奨学金を取得できなければ奨学金という名の大きな金額の学資ローンを組まなければなりません。ここ最近では、奨学金の返済が家計を圧迫し、親子で奨学金破産をしたり、奨学金によって貧困に陥るという家庭も増えています。

そうならないためにも、早くから準備しておけることはしておき、社会人になってから奨学金の支払いが苦しく終わりが見えないということにならないようにしましょう。

もしも、奨学金の返済で困ってしまった時は、様々な制度を利用し支払期間の延長や支払額の減額をしてもらえます。制度の適応で困ったことがあれば、自己破産に詳しい弁護士など専門家に相談することも大切です。