スマートフォンの普及率は2019年時点で約85%と、実に9割近くの人がスマホを所持している時代になりました。ここ最近では、一眼レフにも劣らないカメラ機能を搭載したものや二つ折りタイプなど、高機能な携帯が主流になっています。
機能の充実に伴いスマホの価格は7万円~15万円程度とかなり高額になっており、ほとんどの人が2年縛りの契約で本体価格+月額利用料を分割払いしているのではないでしょうか。そうなると、生活費の中でも「携帯代」というものは大きな割合を占めます。
借金が高額になり債務を返済することが難しいと判断した場合、「自己破産」という選択を取ることがありますが、自己破産をしようとした時、割賦で契約・使用していた携帯電話やスマートフォンの料金はどうなってしまうのでしょうか。
また、支払いが困難になった場合でも継続して使用することは出来るのか、不安になるものです。この記事では、自己破産をした際に分割で支払っていた携帯電話やスマートフォンはどうなるのかについて詳しく紹介していきます。
携帯電話やスマホは自己破産で差し押さえ・没収される?
自己破産の手続きを進めるにあたり、持っている財産は「最低限の生活必需品」を除きすべて差し押さえられます。具体的には、預貯金や給与、不動産、車、住宅、生命保険など高額な財産です。
自己破産を決めた方の中には、携帯電話やスマートフォンも高額な所有物として差し押さえられたり没収されることがあるのかと不安になる方も多くいますが、その心配はほとんどありません。ここで差し押さえられるものは20万円以上の高額な財産のため、端末自体が20万円以上するものでない限りはそのまま所持することができます。
以下は差押さえされない財産の条件です。
- 給与の内の1/4
- 99万円以下の現金
- 換金しても価値にならない生活必需品(家具や洋服etc..)
携帯電話やスマートフォンで20万円以上というものはまずありえないと思いますが、20万円以上のパソコンを所有しているという方は高額財産として差し押さえられたり没収される可能性がありますので注意してください。
携帯電話・スマホで免責対象になるもの
そもそも、自己破産をすることにより免責(借金が免除されること)される対象にはどんなものがあるのでしょうか。
携帯電話・スマホの本体代
携帯電話やスマートフォンを購入し利用するには、端末本体を分割で支払いながら、月々の利用料金(基本料金や通話料、アプリ利用料など)の支払いをしていきます。もちろん、携帯電話本体を一括購入した方や、購入から2年経っても機種変更せず端末の分割支払が終了している方は、月々の利用料金しか発生していないというケースもあるでしょう。
もし端末代金の分割支払が終わっていない場合は、端末の分割代金は先々の支払い義務があり、残債=債務とみなされるため免責対象になります。しかし、月々の利用料金はその月ごとに発生するため「債務」とはみなされません。
滞納分の利用料金
先述したように、債務とみなされる通信料も自己破産申し立ての際に滞納していなければ、免責対象ではありません。しかし、通信代金を滞納していたり、アプリに課金した分の料金が支払われていないといった場合には、残債=債務とみなされ免責対象になります。
自己破産後に携帯の使用は可能?
自己破産後は、全ての債権者(お金を貸す側の人で、特定の人に対し一定のお金を請求する権利を持つ)に自己破産をしたことを知らせる通知が裁判所から届きます。通信業者も債権者に含まれるため、ここで自己破産の通知を受け取れば、携帯電話やスマートフォンの利用を停止させられるかもしれません。
しかし、通信業者に自己破産通知が届くのは端末代金の残債や滞納している利用料がある場合のみで、それらがなければ通信業者は債権者リストから除外されるため、自己破産通知が届くことはありません。
とは言え、自己破産をするほど資金繰りが困窮していると、携帯電話を利用しつつも利用料金を滞納しているという方も多くいます。そうなれば、通信業者に通知が届き支払不能と判断され、ネットをはじめ電話などの利用は停止され、契約も解除されるでしょう。
結論として、滞納や残債がある方は自己破産後に携帯電話・スマートフォンが使用できなくなる可能性が高いと言えます。
自己破産中に利用料金の支払いは可能?
先に記載した通り、自己破産の手続きでは20万円以下の換金価値があまりない財産に関しては、差し押さえや没収の対象とはなりません。また、携帯電話の通信料金は水道代やガス代と同じように最低限度の生活を維持するために必要な出費です。
そのため、自己破産中であっても携帯電話の利用料金はこれまで通り支払いを継続することが可能です。また、電話を利用した際に発生する通話料金も同様に支払いが可能です。
自己破産手続きを開始する前に利用料金を滞納していた場合は、破産手続きの中で適切に精算しておくことが重要になるでしょう。
自己破産中の端末代の残債・滞納料金の支払い
上記では、端末代の残債や滞納料金がないことを前提に支払いが可能という話をしましたが、それらが残っていた場合に自己破産中の支払いが可能なのかどうかもチェックしておきましょう。結論から言うと、できないことはないものの、手続きが不利になる可能性が高まります。
端末代の残債や滞納料金がある状態で自己破産手続きを行うと、通信業者に通知が届き携帯電話の利用を停止されることもあるため、自己破産中に残債を完済しておきたいと思う方も多いでしょう。
しかし、他の債務は免責されたにも関わらず携帯電話の料金だけを返済してしまうと、金額や理由によっては破産手続きが難しくなったり不利になってしまうこともあります。金額が高ければ返済能力があるとみなされることもあるため、理由や金額について深く考えないまま自己判断で返済してしまうのは危険です。
この点に関しては、どういった判断を下せば裁判所からのお咎めがないかは時と場合によることも多いため、専門の弁護士や裁判所の窓口まで相談してから決めるようにしましょう。
自己破産中の機種変更
自己破産中に携帯電話の機種変更をしたいと思った時、分割での支払いを申し出ると通信業者が事故情報などの審査を行います。自己破産により携帯料金が免責対象になった場合は通信業者に事故情報が登録されるため、分割支払いで携帯電話やスマートフォンを購入することは難しいと考えてください。
ただし、自己破産で携帯料金が免責対象になっていなかった場合は、通信業者に自己破産通知は届きません。自己破産の事故情報が信用情報機関に登録されていなければ、問題なく分割払いでの機種変更が可能です。
自分が信用情報機関に登録されているかどうかは、信用情報機関へ直接開示請求することで確認できるので、不安な方は一度確認してみるのが良いでしょう。
新規契約はブラックリストに掲載されていればNG
自己破産手続きを行うと信用情報機関に事故情報が登録され、個人情報と合わせて掲載されます。このことをブラックリストへの掲載と言い、ブラックリストへ掲載されている間は新規の契約が難しいと考えておきましょう。
対象の通信業者や掲載期間がどれくらいなのかは下記の表をチェックしてください。
信用情報機関 | 掲載期間 | 対象の通信業者 |
---|---|---|
CIC(割賦販売法・賃金業法指定信用情報機関) | 5年間 | NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI |
JICC(日本信用情報機構) | 5年間 | NTTドコモ、NTTファイナンス、ソフトバンク |
KSC(全国銀行協会) | 10年間 | - |
信用情報機関への掲載期間は基本的に5年間で、10年間掲載されることはほとんどありません。この掲載期間を過ぎると信用情報機関からは事故情報が削除されるため、新規の分割契約などが自由に出来ると思う方も多いでしょう。
しかし、信用情報機関に事故情報が掲載されると、通信業者が独自に持つブラックリストに転記されることが多く、そうなると信用情報機関から事故情報が削除されたとしても、通信業者の間で過去の事故情報が半永久的に残り続ける可能性があります。
通信業者は自社で管理するブラックリストの他に通信業者全体で共有されるブラックリストの閲覧権限もあるため、一つの信用情報機関にブラックリスト入りとして事故情報掲載された時点で、すべての通信業者に個人情報が出回っていることも少なくありません。
信用情報機関の事故情報だけでも消したいと思う方もいますが、ブラックリストに載った情報は原則としてどんな手段を使っても期間が経過するまで消すことはできません。
盗難被害により誤った情報を掲載されたなど、やむを得ない事情がある場合は本人申告という方法で掲載情報を訂正することはできますが、本人による自己破産などであれば掲載期間が過ぎるまでブラックリストに載ることは避けられないでしょう。
自己破産後に携帯電話を手にする方法
自己破産をしたあとで、再度携帯電話・スマートフォンを手にするには以下のような方法があります。
免責から5年後に再度分割購入
通信業者独自のブラックリストのことは考慮せず一番正確性の高い方法で携帯電話やスマートフォンを手にするならば、信用情報機関から事故情報が削除される自己破産から5年後のタイミングで再購入するのが良いでしょう。
この5年が経過せずにイチかバチかで分割購入の審査を受けても、事故情報の掲載を理由にお断りされることがあります。審査に落ちた場合、その行動により新規のブラックリストへ掲載される恐れもあるため、購入の際は5年経過後でも念のため事故情報を確認しておきましょう。
事故情報に関しては、TCA(不払者情報の交換)で確認することが可能です。
一括払いでの購入
分割では審査に落ちる可能性がありますが、端末本体の代金を一括払いすることで携帯電話を購入することができます。携帯電話の端末料金は7万円~9万円程度が相場となっているため、一括での購入はまとまったお金が必要になります。
この費用を工面できる場合には一括購入という手法が最適ですが、10万円近くの大金を用意できないという方は中古の携帯電話を購入することも検討してください。
預託金の支払い
事故情報に掲載されていることで、端末は用意できても回線契約の審査が通らないことがあります。ネットや通話ができなければ携帯電話を持っている意味がなくなってしまうので、回線契約は絶対に結んでおきたいものです。
これはすべての通信業者が対応していることではありませんが、預託金(賃金の未払いに備え預けておく代金)の支払いにより回線契約の審査を通してくれる業者もあります。預託金を用意することができるのであれば、その代金によって信用を得ることが可能です。
電話番号を引き継ぐためMNPを転入・転出
自己破産をしても元の電話番号はそのまま使えるようにしておきたいという方も多いでしょう。ネットが使えなくなったとしても、電話だけは…という方もいます。こういった場合には、MNP(ナンバーポータビリティ)といって、電話番号は元のままで通信キャリアだけを乗り換えられるサービスを利用しましょう。
自己破産時に利用していた通信業者でMNPへ加入する手続きを行えば電話番号の引き継ぎは可能なので、ネットよりも電話が重要という方は必ず行っておきたい手続きです。
SIMフリー端末で格安SIMを利用
自己破産は何度も連続して出来るものではありませんが、今後のためにも高額の端末を何度も分割購入することがないように、SIMフリーの端末を購入してしまうというのも一つの手です。
一度SIMフリーの端末を中古などで購入してしまえば、格安SIMのみ契約すれば済むため、端末の分割費用も必要ありません。格安SIMはソフトバンクやdocomoなどのキャリアよりも審査が厳しくなく、通信料がかなりお得になるため、携帯代金をなるべく安く抑えたいという方にもおすすめです。
まとめ
自己破産をしたら、現在分割で支払い中のスマホや携帯電話はどうなってしまうのか不安だったという方も多いでしょう。スマホや携帯電話は生活になくてはならないアイテムで、これなしに長期的な生活をすることは現代では難しくなってきています。
最後に、自己破産をした際にスマホや携帯電話がどうなってしまうのか、簡単におさらいしておきましょう。
- スマホや携帯電話は自己破産をしても没収されたり差し押さえられることはない
- 端末の残債や利用料金に滞納がある場合には、破産手続きで処理する
- 端末の残債や利用料金の滞納があるまま自己破産すると携帯電話の使用は停止になる可能性大
- 自己破産後でもスマホや携帯電話を使用する方法はある
端末の残債や利用料の滞納がある場合は、自己破産後に通信業者へ通知が届き、信用情報機関に事故情報が掲載されることで様々な不自由さを経験することになるでしょう。しかし、自己破産後は一切スマホや携帯電話が使用できなくなるかと言えば、そうではありません。
端末代金の残債や滞納している利用料がある場合は債権者に通信業者も含まれるため自己破産の通知が届いてしまいますが、それらがなければブラックリストへの掲載と少しの制限をもってスマホを使用することは可能です。
もし現在分割払いの最中で自己破産を検討している方がいれば、自分のケースではどのような行動をすれば携帯電話の使用を停止されず、利用料を支払うことが出来るのか、専門の弁護士に相談するのが良いでしょう。