2020.01.11

自己破産後でも住宅ローン審査が通りやすくなる方法&破産後の家やローンはどうなるのか

自己破産をしたら住宅ローンはどうなるのか

残った住宅ローンの支払い義務は?

自己破産手続き後に免責対象が決定すると、これまでに負った債務の支払い義務がなくなります。住宅ローンも債務=借金の一部に含まれるため、免責対象になった時点で自己破産以降、住宅ローンを支払う義務はありません。

住宅ローンは金利こそ低いものの、支払いにより生活が困窮してしまうこともあるでしょう。そういった場合には、支払い義務がなくなるという大きなメリットがある自己破産を検討される方も多くいます。

ただし、住宅ローンの支払いに困ったら自己破産をするのがベストというわけでもありません。このデメリットについては後程説明したいと思います。

住宅ローンの連帯保証人への影響は?

自己破産手続きを行い住宅ローンの支払い義務がなくなっても、その住宅ローンに連帯保証人がいた場合には、連帯保証人の支払い義務までなくなることはありません。自己破産により住宅ローンを組んだ本人に支払い義務がなくなると、今度はその住宅ローンの連帯保証人へ支払い義務が発生します。

自己破産をしたことや、月々の住宅ローンの支払を滞納したことにより期限の利益を失っていれば、金融機関は連帯保証人に対して残債務の一括請求が可能になり、分割での支払いすらも認められない苦しい状況に置かれます。

もちろん、金融機関への交渉次第では分割での支払いを認めてくれる場合もありますが、どちらにしても残債務をすべて背負うことになる連帯保証人への負担は計り知れません。

ここで支払いが難しいとなると、連帯保証人の財産の処分やマイホームの競売、最悪の場合は連帯保証人までもが自己破産をせざるを得ない状況に陥りますので、住宅ローンに連帯保証人を付けている場合は、自身の状況だけで自己破産を決定してしまうのは危険です。

ただし、債権者(住宅ローン保証会社や銀行等の金融機関)は抵当権を行使し住宅の売却資金を住宅ローンの返済に充当するため、残っていた住宅ローンが住宅売却費用ですべて完済出来れば、連帯保証人の返済義務もなくなります。

この売却費用を充当してもなお住宅ローンが残るような場合は、残りの住宅ローンの支払いは引き続き連帯保証人の義務として残ることになります。

住宅ローンに連帯債務者がいたら?

住宅ローンを組む際に、配偶者を連帯債務者にしているケースも多くあります。その場合も連帯保証人と同じく残債務を一括請求されることがあります。分割払いの交渉に関しては、新たな別の連帯保証人を付けるといった条件が提示されることもあります。

離婚をするなら住宅ローンは自己破産で相殺が正解?

近年増加傾向にあるのが、離婚を理由に住宅ローンの支払いが困難になり、自己破産をするというケースです。住宅ローンの名義は、離婚を理由に変更することは難しく、配偶者を連帯保証人や連帯債務者にしていた場合は、離婚を理由に解除することもできません。

住宅ローンを組んだ段階では夫婦2人の収入が合算された上での支払い額になっているため、住宅の名義になっている夫、または妻1人で支払いを続けていくのは大変なことでしょう。離婚を理由に住宅ローンの支払が苦しくなった場合は、自己破産よりも任意売却で住宅ローンを相殺することが多いです。

自己破産をしたら住宅ローンで購入した家はどうなるのか

住宅ローンを完済している場合

住宅ローンを完済していれば、その家は自己破産をした本人の財産です。自己破産手続きを取ると、必要最低限の生活を維持するために必要なものと以下の条件に当てはまるもの以外は全て差し押さえられ、その対価として債務をチャラにできます。

  • 給与の内の1/4
  • 99万円以下の現金
  • 換金しても価値にならない生活必需品(家具や洋服etc..)

上記に該当しない預貯金や車、生命保険、住宅はすべて差し押さえられ、売却代金を債権者に対して配当することで相殺します。せっかく住宅ローンを払い終わったマイホームですが、自己破産をすれば間違いなく差し押さえ対象になるため、破産管財人に売却される前に家から出ていかなくてはなりません。

返済した住宅ローンの支払金額が戻ってきたりということもなく、家も自分のものではなくなってしまいますが、莫大な借金を抱えているという場合には一気に借金をゼロに出来る有効な方法です。

住宅ローンが残ったまま自己破産した場合

住宅ローンの支払いが途中のまま(支払い義務を残したままの状態)で自己破産をした場合は、住宅ローン保証会社や銀行等の金融機関によって家を売却され、売却代金を住宅ローンの返済に充当することになります。

なぜなら、住宅ローンとは家を担保に購入資金を借り入れる制度だからです。売却代金を住宅ローンの返済に充当してもなお住宅ローンが残ってしまう場合には、自己破産手続きで免責決定を得ることで、支払義務をなしにできます。

自己破産後に住宅ローンが組めるのは何年後?

自己破産後は、すぐに住宅ローンを組むことができません。自己破産手続きをすると、信用情報機関に事故情報(個人情報と紐付けられた自己破産履歴)が掲載され、支払い能力がない者としてブラックリスト入りします。

信用情報機関とは、CIC(割賦販売法・賃金業法指定信用情報機関)、JICC(日本信用情報機構)、KSC(全国銀行協会)3つのことで、CICとJICCは5年、KSCにおいては10年という期間で事故情報が掲載されるため、その期間中は住宅ローンをはじめ、クレジットカードや携帯電話の新規契約審査などが通らないのです。

そのため、自己破産直後は住宅ローンを組もうとしても融資審査に通らないことが大半なので、自己破産後に住宅ローンが組めるのは、実質信用情報機関への掲載が終了する5年後、または10年後というのが一般的です。

自己破産後でも住宅ローンの審査を通りやすくする方法

信用情報機関の自己破産情報が消えるのを待つ

過去に自己破産をしたという履歴がある限り、住宅ローンの審査はほとんど通りません。忍耐が必要ではありますが、まずはJICやJICCから履歴が完全に消えるのを待つということが重要です。

信用情報機関の履歴がクリーンになっていれば、住宅ローンの審査を担当する金融機関への印象も良くなり、審査に通りやすくなります。

全国銀行協会は10年という長期間履歴の掲載が消えないため、5年が経過した時点で信用情報を開示チェックし、問題なければ一度審査の申込みをしてみても良いかもしれません。

ただし、より審査に通りやすい状態にするならば、全国銀行協会の提示する10年は住宅ローンの審査を見送り、10年が経過してから審査の申込みをするのが良いでしょう。

クレヒスを作る

クレヒスとはクレジットカードヒストリーの略で、クレジットカードやローンを契約する際に登録した個人情報や、これまでの取引履歴のことを指しています。クレジットカードや住宅ローンの審査の際は、このクレジットカードヒストリーが大変重要な判断材料になります。

なぜなら、クレヒスには取引の大小を問わず全ての取引内容が掲載されており、その情報は信用情報機関に登録された後、すべてのクレジットカード会社と共有されているためです。この取引内容に問題があれば、あらゆる審査に通りづらくなってしまうため、住宅ローンを組む前は、最低でも1年前から問題のないきれいなクレヒスを作っておく必要があります。

スマホの分割払いなど月数万円程度で構いませんので、月々の支払い履歴を作っておきましょう。キャッシング枠は不要なため、新たに借金などを作ってしまわないためにも、カードローン・キャッシングの作成は控えてください。

ノンバンク(ノーゲージ)の住宅ローンやフラット35で審査の申込み

審査が通りにくいということであれば、金融機関を選んだ上で審査の申込みを行うという手もあります。例えば、住宅ローンのみを扱っているノンバンク系(銀行系列以外)の金融機関はKSC(全国銀行協会)に加盟していないこともあり、審査で照会されなければ5年目以降住宅ローンが通る可能性が高まります。

ノンバンク系の金融機関は金利が高いというデメリットがあるため、自己破産歴のある方にはおすすめできませんが、その時の状況で余裕があれば試してみる価値はあるでしょう。

また、フラット35の住宅金融支援機構はKSC(全国銀行協会)にこそ加盟しているものの、自己破産履歴で審査を通さないという判断を下すことは少なく、現状の信頼要素がどれだけあるかによっては貸付を行ってくれます。

頭金の準備や現在の年収などいくつかの要素が必要にはなりますが、こちらは金利も低いため本審査のみだとしてもチャレンジする価値があります。

成約残しがあると審査に通らないため、信用情報は必ず開示

自己破産をした経験があるという方は、住宅ローンの審査前に必ず信用情報の開示チェックを行ってください。

信用情報機関への掲載は、CICやJICCであれば通常5年で消えます。しかし、稀にこの情報が正しく削除されず、借入情報などが残ってしまっていることがあり、これを成約残しと言います。

自己破産をした際は、すべての債権者に破産通知が送られるとともに、賃金業者には免責決定通知が送られますが、何らかの理由で裁判所からの通知が届かなかった場合は情報がそのまま消されずに残ります。

こういったケースは稀ですが、もし成約残しがあれば賃金業者に免責決定通知を送ることで信用情報機関への消し忘れは削除されますので、必ず住宅ローンの審査申し込みの前に自分自身で開示・確認することが重要です。

「同時・連続・複数」の金融機関への申込みはNG

自己破産をしてから5年、10年が経過し、信用情報機関の事故情報が取り下げられたとしても油断はできません。住宅ローンの申込先が過去の借り入れ先系列の金融機関だった場合などは、過去の自己破産データを照会され、審査が否決することがあります。

そういった審査の否決情報も信用情報機関に6ヶ月もの間掲載されてしまうので、同時に複数の金融機関に連続して申し込むと、否決データを理由にいつまでも審査が通らなくなってしまいます。早く審査の申込みをしたい気持ちは分かりますが、審査の申込みは慎重に行うようにしましょう。

資金をなるべく多く集める

住宅ローンの審査に通りやすくするには、自己資金が出来るだけ多い方が有利です。配偶者や両親などに新たに借り入れをしてもらい、その資金を審査の際に提示したりなど、頭金が多く出せるように準備しておきましょう。

自己破産をしたら10年は信用情報機関に事故情報が載ると考えれば、その間は住宅ローンの審査をすることもできません。その期間は気持ちを入れ替えて、住宅ローンの審査と今後の生活のために貯金をしっかりしておく必要がありそうです。

住宅ローンがある人が自己破産する前に出来ること

金融機関への相談

これは住宅ローンに限る話ではありませんが、支払いが難しくなった時、金融機関へ何の相談もなく滞納したり、支払いの遅延を続けることは賢明ではありません。住宅ローンの支払いが困難になったら、まずは金融機関に相談することが重要です。

金融機関に相談したからと言って、支払額が大幅に減ったりチャラになるということはあり得ませんが、月の返済額を減らしてもらえたり、改めて返済スケジュールを見直してくれたりすることが多いです。

これに関しては、どれほど支払いに困っているか金融機関に相談することで、今後の選択肢や現状の改善など視野が広がるため、出来る限り行った方が良いでしょう。

債務整理の選択肢を視野に入れる

住宅ローンの支払いが厳しくなる要因として、住宅ローン以外の債務による家計の圧迫というものがあります。住宅ローンの支払いまで手が回らないほど他の債務が膨れ上がってしまっているという場合は、弁護士を通じて債務整理の相談・依頼をするという方法もあります。

債務整理によって住宅ローンの支払いが出来るようになれば、自己破産をしてマイホームを手放さなくても良くなります。弁護士に債務整理の相談をしつつ、金融機関にも支払いが難しい旨をしっかり相談することで、かかっていた負担は大幅に解消出来るはずです。

民事再生(個人再生)も検討

民事再生(個人再生)とは、住宅ローンの支払いは今までと変わらず継続しつつ、他の債務を裁判所管轄の手続きによって大幅に減額出来るという制度です。条件こそありますが、自己破産はしたくないものの、それしか方法がないといった時に、家を手放さずに債務をどうにかする方法として、民事再生を視野に入れておくことが重要です。

まとめ

マイホームを購入し住宅ローンを支払うには、生涯を通しての支払い計画、見通しが必要です。もしも、予期せぬ事故や病気で働けなくなったり、離婚をきっかけに支払いが厳しい状況になった場合は、自己破産をして住宅ローンを精算したいと考える方も多いでしょう。

しかし、住宅ローンを整理する方法は自己破産だけではありません。住宅ローンの負担が大きくどうにもならなくなった時は、どのような債務整理をするのがベストか、専門家に相談してみるのが良いでしょう。

また、自己破産後に再度住宅ローンを組むことも可能です。ただし、審査に通るようにするには最低でも5年、長くて10年、辛抱強く信用情報機関の事故情報が消えるのを待たなくてはなりません。その期間で再度借金をしたり貯金ができないようなことにならないよう、しっかりと計画を立てながら、地道に住宅ローンを組む準備を進めておきましょう。

最後に、住宅ローンと自己破産のルールや注意点についてまとめておきます。

  • 自己破産の情報はCIC・JICCに5年、全銀協に10年の間掲載され続け、消す方法はない
  • 住宅ローンの有無に関わらず、自己破産をしてマイホームを残すような方法はない
  • フラット35など10年未満でも住宅ローンの審査が通る方法はある
  • 信用情報を開示し「成約残し」がないか要チェック
  • 自己破産前に、金融機関への相談や債務整理、民事再生を検討することで家を守れる可能性がある

住宅ローンの支払が難しくなってもすぐに自己破産手続きを取らず、まずは金融機関や弁護士に事情を説明し、相談に乗ってもらうようにしましょう。最終的に自己破産の選択が正しいと判断される場合もありますが、民事再生や債務整理が有効の場合も多くあります。

自己破産をすると、その後再度住宅ローンを組もうとしても、クレヒスを準備したり信用情報から自己破産履歴がキレイになるのを待ったりと、時間や労力がかなりかかってしまいます。なるべく家を残しつつ、破産履歴が残らないようにできないか、専門家と相談しながら慎重に判断するようにしましょう。